【格闘技】殊勲の把瑠都「横綱に勝ちたかった」

 割れんばかりの歓声の中、満面に笑みをたたえた把瑠都が、意気揚々と花道を引き揚げる。対白鵬12戦目で初の白星は、横綱の連勝を30で止める大殊勲となった。

 支度部屋に戻ると、付け人とグータッチ。風呂にも入らず報道陣の前に座ると、「2年かかりました」と思いを込めてはき出した。

 「がっぷり四つになれればと思っていた」というが、立ち合いで当たるや、白鵬に右を差され、左上手を取られた。相手十分の体勢だが、次の瞬間、左を巻き替えるや、そのまま一気のすくい投げ。自身の体をも投げ出す強引な投げだったが、横綱を土俵にはわせた。

 「よかったッス。すごい」。喜びの言葉があふれ出す。「ただいい相撲を取りたかった。(すくい投げは)向こうが出てきたから、それしかないと思い切りいった」

 初土俵からわずか2年の平成18年夏場所、幕内に昇進。198センチの上背と180キロ近い体重からくるパワーを生かしスピード出世を重ねたが、白鵬には11敗、朝青龍には9敗で勝ちがなかった。「勝てない相手は横綱しかいないから、横綱に勝ちたいと思っていた。今は頭の中が空っぽです」

 今場所は関脇に復帰して2場所目。ここで好成績を残し、来場所の大関昇進の足がかりとしたいところだが、「まだ半分残ってるから。一番一番頑張りたい」。そう言って笑った。(只木信昭)

 ■反省です

 自分の形にしながら、把瑠都の強引なすくい投げに手痛い1敗を喫した白鵬は「甘さだな」。想定外の投げだったかと聞かれると「ウーン、そうですね。相手の巻き替えも早かった。反省です」と肩を落とす。

 連勝は30でストップ。「何と言えばいいのか…。こんな力でしょうね」と自嘲(じちょう)気味。尊敬する双葉山の連勝が69で止まったのは1日違いの1月15日(昭和14年)。「運命ね…。そう言われればそうかな」と力なく話した。